前足部と後足部を非荷重・立位・歩行で評価する違い
歩行周期とは
私たちは普段、ほとんど意識することなく歩いています。
しかし一歩の中では、足が地面に着いてから離れるまで、足の骨や関節は同じ状態を保っているわけではありません。
地面から受ける力に適応するために柔軟性を高める段階と、身体を前へ進めるために安定性を高める段階があります。
この一連の流れを理解するうえで重要なのが、歩行周期(gait cycle)です。
歩行周期とは、一般に一方の足が地面に接地してから、同じ足が再び接地するまでの一連の動きを指します。
このページでは特に、足が地面に接している立脚期を中心に、足部がどのように働いているのかを見ていきます。
足が地面に接地する
正常な歩行では、踵の外側付近から地面に接地します。
ここから身体の重さが足へ移っていきます。
接地した直後の足には、単に身体を支えるだけでなく、地面から受ける力に適応する働きが必要です。
足が完全に硬い構造であれば、地面の状態や身体から加わる力に柔軟に対応することが難しくなります。
そこで足部では複数の関節が連動し、地面へ適応するための動きが起こります。
荷重応答では足の柔軟性が重要になる
接地後、身体の重さが足へ移っていく段階では、足は地面から受ける力に適応する必要があります。
この段階で重要になるのが回内(pronation)です。
回内は異常な動きではなく、正常な歩行に必要な足部の動きです。
適切な回内が起こることで、足部は柔軟性を高め、地面の状態や身体から加わる力に適応しやすくなります。
つまり、
接地・荷重 → 地面への適応 → 足部の柔軟性
という働きがあります。
【内部リンク:回内・回外とは】
立脚中期では身体が足の上を通過する
身体の重心が前方へ移動すると、身体は支持している足の上を通過していきます。
この段階では、足は体重を支えながら、次の蹴り出しへ向けて状態を変化させていきます。
ここで重要なのは、接地直後に必要だった柔軟性だけを保ち続けるのではなく、徐々に安定性を高めていくことです。
足部の動きは「柔らかい状態」と「硬い状態」に突然切り替わるのではありません。
歩行の進行に合わせて連続的に変化します。
蹴り出しでは足の安定性が必要になる
歩行の後半では、踵が地面から離れ、身体を前方へ進める段階に入ります。
このとき、足には接地直後とは異なる役割が求められます。
柔軟に地面へ適応するだけではなく、身体から加わる力を地面へ伝えるための安定した土台になる必要があります。
この働きには回外(supination)方向への変化も関係します。
簡単に整理すると、
歩行前半:地面へ適応するための柔軟性
歩行後半:身体を前へ進めるための安定性
という役割の変化があります。
回内が「いつ起こるか」も重要です
足を見るとき、回内の大きさだけが注目されがちです。
しかし歩行では、時間的な要素も重要です。
例えば同じ程度の回内が見られる場合でも、
- いつ回内が始まるのか
- どの程度まで回内するのか
- いつ最大になるのか
- どのくらい長く続くのか
- 歩行後半で安定する方向へ移行できるのか
によって意味が異なります。
そのため、静止した状態で「踵が傾いている」という情報だけでは、歩行中の足の機能すべてを判断することはできません。
【内部リンク:過回内とは】
前足部と後足部も歩行中に連動する
足は踵だけで動いているわけではありません。
後足部・中足部・前足部が複数の関節を介して連動しています。
また、前足部と後足部の位置関係によって、荷重時に足部が地面へどのように適応するかも異なります。
そのため歩行を見る場合にも、
踵の動きだけを見る
土踏まずだけを見る
足跡だけを見る
のでは十分ではありません。
足全体が一歩の中でどのように変化しているのかを見る必要があります。
【内部リンク:前足部内反・外反とは】
静止した足と歩いている足は分けて評価する
立っている状態で足を見ることは重要です。
しかし、歩行中の足は常に変化しています。
そのため足部評価では、
非荷重評価
体重をかけていない状態で、足の骨格や関節、前足部と後足部の位置関係などを見る。
荷重評価
立った状態で、体重が加わったときに足がどのように変化するかを見る。
動的評価
実際に歩いたときの回内・回外や、そのタイミングなどを見る。
という複数の視点を組み合わせます。
一つの状態だけを見るのではなく、構造と実際の動きを関連づけて考えることが重要です。
インソールを考えるときにも歩行を見る
インソールは、静止している足の下に置くだけのものではありません。
実際に使用するのは、立ったり歩いたりするときです。
そのためファンクショナルオーソティックスを考える場合にも、
足がどのような構造をしているのか
だけではなく、
荷重するとどう変化するのか
歩行中にどのように動くのか
を考えることが重要になります。
足裏の形だけではなく、足の構造と機能を評価する理由がここにあります。
【内部リンク:ファンクショナルオーソティックスとは】
一歩の中で足は役割を変えている
歩行中の足は、単なる身体の土台ではありません。
地面へ接地した直後には、地面から受ける力に適応するために柔軟性を必要とします。
そして身体が前方へ進むにつれて、今度は力を伝えるための安定性が必要になります。
つまり足は一歩の中で、
地面への適応
↓
体重支持
↓
安定性の向上
↓
蹴り出し
というように役割を変化させています。
この仕組みを理解すると、なぜ足を静止した「形」だけで評価するのでは不十分なのかが分かります。
足部バイオメカニクスでは、足の構造と歩行中の機能の両方を見ることが重要です。
【内部リンク:足部バイオメカニクスとは】


